LEADERS BLOG

リーダーのためのブログ

2017.04.27

協創の現場から人材戦略・人材開発

働き方改革の落とし穴

 働き方改革、ダイバーシティ、女性活躍推進…政府が旗振りし、多くの企業が取り組みを進めており、メディアでも先進的に行っている組織は大きく取り上げられ注目されています。

 一方で、企業の経営サイドには「一般社員に配慮することで管理職にしわ寄せがいってしまっている」「最近社員の“線引き”が激しく、強要するとコンプライアンスにひっかかってしまう」といった悩みも生まれているようです。

 顧客満足とともに社員にとっても望ましい環境をつくり、生産性向上ややりがいにつなげようとの考え方は当然なのですが、ややもすると「社員の抱える事情は否応なく受け入れなければならない」「企業は社員に負荷をかけてはいけない」といった、誤解を生みやすい危険性を孕んでいます。

 先日ある会社さまで、事業拡大に伴い新たな企業文化をつくるための全社的なプロジェクトを立ち上げ、現場の社員の巻き込みを検討していた際、次のような声が挙がりました。

「この層にここまでやらせてしまうのは、期待過剰なのではないか」
「今の役割・業務範囲を超えたと認識されると、負担が大きいと離れていってしまうから、過度な巻き込みは控えた方がいいのではないか」

 また別の会社さまで、女性活躍を推進しようと上司向けにキャリアマネジメントミーティングを企画していた際にも、こんな声が挙がりました。

「家庭の事情に踏み込み過ぎて、子育てや結婚について相談されてもどう受け止めていいか正直言って難しい。そのような状況で女性社員に管理職になることを示唆することは、企業側の事情を押し付けることにならないのか」

 本当にそうなのでしょうか。

 組織キャリア理論において、学習体験や環境変化によってキャリアは拡大していくという考え方があります(J.D.クルンボルツら)。そこではむしろ、個人にとって偶然的な出来事が個人の可能性を拓いていくものだと主張されています。

 会社からの期待には、時として本人への「負荷」が伴います。しかし個人が環境を活かしてキャリアを拡大していくものだとすれば、過度な配慮は、個人のキャリアの制約につながりはしないでしょうか。

 冒頭の会社さまでは、新たな企業文化をつくる若手プロジェクトを推進。最終アウトプットの確認の場で、こんな声が挙がってきました。

「自分はこの表現ではオブラートに包みすぎていて社員に本来の意味合いが伝わらないと思う。もっと会社としてどんな風に変わっていくのかを明確に伝えたい」
「このアウトプットに限った話でなく、普段の業務の中でも曖昧にしがちな空気を感じている。これからははっきりとこれはこうだと主張し合う文化をつくっていきたい」

 開始当初は自分自身と会社を切り分けて議論されることが多かったのですが、プロジェクトが進むにつれ、明らかにそれらが重なり合い、企業文化づくりを推進していく立場としての発言に変化していました。

 その変化の背景には間違いなく、その会社さまが思い切って自社の重要事項の決定に彼らを巻き込んだ事実や、彼ら自身の「お客様から選ばれるこんな会社にしたい」という思いを引き出したプロセスがあったからだと思います。

 例えばどんな会社にしていきたいか、どんなビジネスを展開していきたいか、今の立場・役割の範疇を超える思い切った投げかけが社員の可能性を拓くのかもしれません。


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『賞味期限』を切らさない~ベテラン・シニア管理職のキャリア開発
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田積 智子