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リーダーのためのブログ

2013.12.25

協創の現場から人材戦略・人材開発

効果性を高める「人事制度」の運用とは?(後編)

<第2回> マネジャーのための「人事制度」活用のポイント

 

 

 人材戦略コンサルティング・人材育成を実践するチーフコンサルタントの杉岡篤樹が語る「効果性を高める『人事制度』の運用とは?」の後編。前回は、人事制度とは本来業績成果・戦略実現にインパクトあるものであり、そのためには「運用」がカギとなり主体者であるマネジャーのあり方が重要、というお話をしました。今回は、マネジャーの方々が人事制度をパフォーマンスにつなげるための方策について考えていきます。

 

 

 

人事制度の効果性を阻害するマネジャーの2つの「誤解」

 

 人事制度改定の際などの考課者研修の中で感じることなのですが、マネジャーの皆さんは「人事制度」について2つの誤解があり、これが業績向上・戦略実現など本来の効果性を阻害する要因になっていると思っています。
1つ目の誤解は
【人事制度は、最終的に上司が部下の処遇を決めるためのもの】 というものです。

―どういうことでしょうか?
 マネジャーの皆さんが「人事制度」を活用するタイミングって、どんな時だと思いますか?

―上期・下期の「考課面接」のタイミングでしょうか。
 そうですね。それに加え目標管理制度を導入している企業の方は、目標設定の面接など、年4回程度くらいを思い浮かべると思います。しかし、これは本当に最低限の回数ですね。

―「最低限」とはどういう意味でしょうか?
 タイミングが少なく、固定化されているというのは、マネジャーにとって人事制度運用の主な目的が「処遇を決めるため」になってしまっている可能性が高いということなんです。考課される側の社員の皆さんの認識からも、必ずといっていいほど不満として「結果だけ見て一方的に評価される」という声が出てきます。 

 

人事制度を「結果に基づく処遇決定ツール」から「日常のフォロー・軌道修正のマネジメントツール」へ

 評価はもちろん重要ですが、業績向上・戦略実現するサイクルを速めていくには、その期が終わった後では遅いですよね。「結果に基づく処遇決定ツール」から「日常のフォロー・軌道修正のマネジメントツール」と捉えなおすことが重要なのです。例えば目標管理制度であるなら、掲げた目標を達成するために、状況を確認してアドバイスする。通常の業務に関することなら細かくチェックしたりフォローしているのですから、各自の課題についても同じようにできるはずなのです。

―「目標管理制度」を導入している企業以外は、難しいのでしょうか?
 そんなことはありません。目標管理制度でなくても、「いきなり結果を評価された」と感じさせる前に、期中の段階でアドバイスなりイエローカードなりを提示できていれば、解決されることがほとんどなのです。

―なるほど。それでは、もう一つの「誤解」というのはどんなものでしょうか?
2つ目の誤解、は
【期初に目指したい結果目標を与えることが考課者の役割】というものです。


どこが変革の「ツボ」か~結果目標だけでなく実現のための「仮説」を考える

 定量・定性に関わらず求める「結果目標」だけ与えても、メンバーの手によってそれが実現されにくいことは皆さんも実感としてお持ちのことと思います。けれども、メンバーの行動を促進するための具体的な手が打たれていないことが多いのが現実です。

―そんなことはない、という声が聞こえそうですが…
 例えば課員が具体的な施策として「ニーズにあわせた提案をする」とあげたときに、「ニーズが把握」されるためにどのような状況が作られる必要があるのかまで指摘しているマネジャーの方は少ないと感じています。
 「結果を出すために、組織レベルで何を変えなければならないか」という変革仮説を考えることがマネジャーの仕事です。例えば「売上拡大」が結果指標であれば、どのような仮説に基づき、どのような行動をマネジャーとして課員に促進する必要があるのか? ということを考えるのです。これは、目標管理型でもプロフィット型でも一緒です。

―例えば「訪問件数を増やす」というようなことでしょうか?
 そのことでいうと、今、私どもがお手伝いしている会社さまでは、経営者の方の「変革への主体性を高めたい」という思いから、人事制度の中で課毎に「プロセス指標」を設け業績結果とともに評価する仕組みを導入しています。その中で「訪問件数」は導入初年度、営業部門のマネジャーの方の多くがプロセス指標として設定していた項目でした。
 でも、それだけではなかなか業績結果に結びつかないのが現実で、「プロセス指標」も設定をもっと工夫する必要があると考えています。というのは活動の「量」を増やしたからといって、今までと変わらない営業活動の中身では飛躍的に成果が高まりませんよね。その会社さまでは、自社の今の状況に合わせて、提案活動の「質」を変えることってどんなことだろう、と考える活動を今行っています。

―深掘して考えるのはなかなか難しいですよね。
 この会社さまの場合は、プロセス指標がうまく業績に結びつかない原因として、経営者・マネジャーの両方とお話しする中で、マネジャー自身の思考が、「上位者により掲げられたもの」、例えば社長からの期待感をそのまま遂行するように習慣化され、あまりご自身で「自課のありたい姿やそのための変革ポイント」について思考する経験が少ないことが考えられました。
 そこで翌期は、経営者の方には大方針のみ明示していただき、課毎の業務フローから自分たちの変革のツボを思考していただくことにしました。まだ始まったばかりですが、これまで一年間実践してみた中での失敗から「マネジャー自身が自組織の変革ポイントを深く思考すること」への重要性が制度導入当初より高まっており、これからの業績への貢献度合の向上が期待されます。

 

見える化して「実践行動」を促進する

 もう一つ大事なのは、マネジャーご自身だけでなく、課員に変革の仮説を「大事だ」と思わせ実践行動を促進することです。そのためにはわかりやすく「定量化・数値化」して見える化することが効果的です。例えば、先ほどの営業提案の「質」だったら、個人の提案を他の人でも使えるように蓄積化した「ナレッジ化件数」など。数字が伸びないなら何故かを一緒に考え、増やすためのアドバイスをするといったマネジメント行動を毎月のサイクルにしていくのです。

―これは、日常のマネジメントの質そのものを高めていくことにつながりますね。
 課目標を達成することは、マネジャーの皆さんは常に意識していらっしゃると思います。「人事制度」の仕組みを使えば課の目標・そして実現のための仮説を、皆さんだけでなく課員に認識させやすくすることができます。今、マネジャーの皆さんは来期の組織目標を思考されているところだと思います。ぜひ、その際に仮説も一緒に考え活かしていただければと思います。

 

この記事の執筆者

杉岡 篤樹

コンサルタント
専門分野:人材戦略