LEADERS BLOG

リーダーのためのブログ

2015.08.18

朝礼講話のネタ帳

支援者に求められる積極性

 
 先日、研修終了後の個人面談を行った時に、ある受講生から次のような相談を持ちかけられた。
「入社以来、自分には信念というものがなかった。工場で働き続け、生産性や品質向上の知識や技能は身につけたが、仕事人生でこだわりたいことが何であるか、時間をかけて考えれば、分かるものなのだろうか。」とても真剣な表情で悩み、面接に臨んでいた。

 私は、それに対し、いつもであれば価値観や信念を明確化するフレームワークを紹介するのであるが、この時はなぜか反射的に、いつも持ち歩いている自分の手帳の1ページ目を相手に見せた。そこに書かれていた内容は、私が40歳の節目に決めた、8項目の自己ミッション(人生指針)だった。

  私には30代後半に病で入院した経験がある。国の難病指定とされる病だったものの、軽度の症状で1ヵ月の治療期間を経て退院することはできた。その1ヵ月間、私は神様から「何か考えなさい」と言われているような気がして、自分が働き続ける意味や自分は何者であるかについて整理しようと決めた。そして、実経験に基づく、シンプルで明らかに自分だと分かる自己ミッションを書き出し、手帳の1ページ目に貼り付けていた。出すのは非常に恥ずかしいのであるが、例えば「感動こそが、結果につながる原動力と信じる」「さらけ出すことが器量である」といったことである。

 冒頭の受講生に私は自己ミッションを見せて、信念やこだわりがないということでなく、必ず存在していること、まだ明らかにしていないだけだということを伝えた。

 また、20代から30代に至るまでに悩んだこと、今でも存在している乗り越えられない壁、そしてミッションに背かないことが心の豊かさにつながること等、いつもなら相手に話してもらうことが多いはずなのに、この時ばかりは自分が主人公になって語り出していた。失敗だったかなあと不安気な私に対して、その受講生の表情は明るく、「まずは1行ミッションを書いてみることを決めました。真似してもいいですか」と私に尋ねてきた。

  組織心理学と組織開発の第一人者であるエドガー・H・シャインは、組織開発の支援者に「常に力になろうとせよ」という言葉を説いている。

  多くの支援者は、何らかの目標を達成するために、相手を無条件に肯定することや、相手の重要感を心から受け止めることの大切さを知っている。ただし、支援者自身も一人の人間であることを忘れてはならないと私は思う。支援者が自分の経験、自我、ミッションなどを伝えてはならないということは決してなく、相手と共に積極的な変化を起こす協働作業が重要な時もある。時には、支援者の持つ100の理論だけでなく、たった1つの人生体験が相手の役に立つのではなかろうか。正解がない時代だからこそ、支援者として柔軟かつ積極的であろうと改めて感じている。

馬場 英博

この記事の執筆者

馬場 英博

コンサルタント
専門分野:人材育成