LEADERS BLOG

リーダーのためのブログ

2015.03.11

朝礼講話のネタ帳

マーケティングにおける苦悩

 あなたはブロッコリーが好きだろうか。

 

 密かにブロッコリーがマイブームであり、安く買えるときはその日の献立も無視して手が伸びてしまう。あの歯ごたえと独特の風味がたまらず茎もそのままボリボリ食べてしまう。しかも栄養満点。 葉酸、カリウム、カルシウム、ビタミンA、とりわけビタミンCは、みかんやキャベツの4倍といわれている。低カロリーなのにボリュームがあり、ダイエットにもいい。
さぁこれで今日のランチに採り入れたくなっただろうか。
とはいえブロッコリーはあの味がむしろ苦手だという人も、栄養なら他の野菜でも代用できるから別に食べなくていいと考える人もいる。

 のっけから申し訳ないが、これは別にブロッコリーを売り込むコラムではなく、タイトル通りに読んでほしい。
Dropboxなど多くの起業家を輩出してきたYコンビネーターの代表がある雑誌のインタビューで以下のように答えていた。

 

 「多くの人に受け入れられるものを作ろうとするより、少ない人に熱狂的に愛されるものを作る方が簡単である。あとはそこから多くの人にどう伝えていくかを考えるのである」

 

  「少ない人」の手始めとして、自分がまずはお客さま第一号になる。まずは自分が愛するもの、本当に必要だと思うものが人の心を動かしていくのではないか。
 「でも世の中はそんなに甘くない。自分がどう訴えようが、お客さまはお客さまの価値観・尺度で判断することは当たり前じゃないか?」
その考え方はごもっともである。先ほどのブロッコリーの話は簡潔に魅力を伝えたつもりだが、ブロッコリー嫌いのあなたには、特に印象に共感が持てるものでなかったかもしれない。
しかしここで私にとって難しいな、と感じるのは、相手の求めるものを知り訴求することと、相手の印象を気にしてアプローチのテクニックをあれやこれや工夫するのは別だということである。

 少し表現が難しい。

 例えば「エレベーターピッチ」と呼ばれるプレゼン手法があるが、わずか数十秒の間でどう聞き手のメリットを伝えるかが大事だと理論上は合点がいく。しかし、気の弱い人間にしてみれば、重役を目の前にこんなパーソナルスペースでいきなり話しかけたら失礼だと思われるのではないか、どうやったら失礼のない形で伝えられるか…などが先走り、論点がずれる一方だ。

 「こんなことを言えば相手はどう思うか」「嫌われるんじゃないか」という思考は日本人の国民的特徴ともいえるのではないかと思う。日経ビジネスのあるインタビュー記事で、ダニエル・ピンク氏がセールスに必要な新たな要素を提唱する中、日本人はそれらの要素の一つである「同調性」は得意だが、「以心伝心」に象徴されるように「明確性」が欠けていると指摘していた。「空気を読む」「行間を読む」ことはまさに我々のお国芸であり、それがお客さまを惹きつけるポイントでありつつも、相手を「読む」ことに必死になっていると結局セールスポイントはうやむやに認識されてしまう。

 先ほどのブロッコリーの話に返れば、ブロッコリーの魅力を端的に伝えるのに「こんなときにブロッコリーの話なんて聞きたくないと思われないかな…」「体格のいい相手に勧めるとこっちが肥っていると言っているように聞こえないか…」とか言っている場合ではない。

 私たちのビジネスの現場でもこういった発想がときにビジネス創造の芽を摘んでしまっているのではないか。自社のマーケティングのプロセスを振り返ってほしい。「あのお客さまのテイストを考えるとこんな提案を持っていったら何て思われるだろう」「次の商品開発はまずは市場のアンケート結果で良くなかったところの改善からスタートしよう」…これらはよく言えばお客さま思考だが、悪く言えば迎合的・反応的な製品・サービス提供となりかねない。

「我々の商品(サービス)は、とにかく●●がすごい。」

 受け入れられる顧客層がニッチであろうがなかろうが、顧客第一号であるあなたが欲しいと思う「●●」を。明確な根拠を持って商品開発・プロモーションを進められるか。提供のプロセスが強引かどうかは後回しで考え、まずは少数でも惚れ込まれるプロダクトを生み出し、その魅力をシンプルに表すことに専念しよう。

 そう、あなた自身のブロッコリー道を突き進むだけである。

 

 

田積 智子