LEADERS BLOG

リーダーのためのブログ

2016.04.13

エグゼクティブ・アイ

本当は怖い…

 4月は「新」が溢れる世界。
 数か月後にはそれは日常となるが、新生活にはこれまでの経験には無かったことを沢山経験する。

 会社では新入社員の存在に対して、周囲の人々は目を配り気を配り、日々の成長を見守りながら関与している。
「人材育成」はどこの企業でも永遠の取り組みテーマであるものの、過去の考え方ややり方での効果性に期待するパフォーマンスを得ることができず、試行錯誤しているところが多いという現実がある。 

 私たちの会社でも、さまざまなお客さまの新人研修を行う中で毎年プログラムやアプローチをブラッシュアップしながら取り組んでおり、一定の成果は得られるものの、私たちならではの、これからの時代に通用する「これだ!」というものを特定することに難しさを感じていた。

 そのような状況が続く中で、女性で大手企業の要職の立場にあり、子育てと仕事を両立し、会うたびに成長をみせてくれている友人との会話の中で、共通の悩みであり課題でもある「人材育成」が話題となった。
近年の若者の傾向や新人のできる人・伸びる人の話をしていたところ、ある本を紹介してもらい早速読んだ。

 それは、『本当は怖い小学一年生』(塩見 稔幸著/ポプラ社)という本。

 最近の小学1年生の中に学校という新たな環境に適合できずに、先生や親を悩ます子供たちが多く存在しており、その原因について著者の考えが述べられている。
単に小学1年生の問題ではなく、人を育てる環境や親の関わり合い方、現在の教育制度疲労の問題などを指摘しており、「なるほど!確かに!」と腹落ちできる内容がたくさんあった。

 社内の新人研修の企画実施リーダーにこの本を紹介したところ、私と同様に多くのヒントを得たらしく、これまでと異なる視点でブラッシュアップがされ新人研修が行われた。
結果は、これまでと大きく異なる良いものが得られたと実感している。自然体で一人ひとりの持ち味が体現され、主体的な行動や自責の思考が身についていた。

 実施したリーダーにどうしてこのような仕上がりになったのか、いくつかのポイントの説明を受けたが、その中で最も成功に導いたのは、研修スタートのオリエンテーションで40名弱の新人に「自らの秩序を自らがつくれ」と明確に示したことにあったと思う。

  「人は環境の中で育つもの」「人は知識以上に経験から学ぶもの」

という育成の原理原則に立ち返った時に、人と仕事とその結果だけをとらえても、こちらが期待するような主体的に自立的に創造的にといった仕事スタイルを育むことは困難である。

 見知らぬ人間がスタッフを含めて40名以上集い、その全員で共通目標を限られた時間で達成させるための秩序をどのように形成すればよいのか、彼ら自身が考え、ルールや行動規範を決めて、良い結果が出なければ、彼ら自身が自分たちの責任として解決方法も考え進化させていく。

 もちろん知識として学んでもらう要素はあるが、実社会とはいかなるものか、正解のないものを正解にしていく努力、他者との比較でなく自分自身を肯定的に受け止めて持ち味を発揮することの意義、そして将来への投資=財産として位置づけられている

 自分たちの存在を受容し、感謝の心を育んでいく。
これまでも同様の思考でプログラムは組まれていたが、教示・指示は必要最低限とし、方向付けとゴールの基準は厳しく示し、彼らに多くを委ね見守りながら共に歩むというアプローチに徹する。

 新人だからきちんと教えるという強い思いから生まれる言動は、正しく指示を理解し実践することを強いるため、そういった状況を極力排除する。他者を受けいれる素直さは大事だが、過剰に反応する習性となると従順さとなり、個性を殺してしまうことになる。
教える側にもこれまでのクセや習性があるため、そういったことを理解した上での自己管理と忍耐が求められる。

 年齢も個性も異なる組織という環境で、共に成長し続けるということはこういうことなのだと思う。
我々の役目は、限られている。実社会で本当に気づいたことを信じて行動できるかどうかは、彼ら一人ひとりの意志と行動だ。新たな環境で自分を活かして欲しいと心から願う。

 「本当は怖い・・・」のは、一年生でも新入社員でもなく、思い込みが強く、過去の経験に捉われた私たちである。
自分たちの若い頃との違いを思い、嘆いていてもどうにもならない。ゆとり教育~さとり世代といった言葉で片付け、納得してはいけない。

 次世代を担うに値する人材を人「財」に変えることができるか。人を「育てる」から人が「育つ」環境を今一度考え直す時にきている。

 

臼井 弥生

この記事の執筆者

臼井 弥生

代表取締役社長