LEADERS BLOG

リーダーのためのブログ

2019.12.11

協創の現場から人材戦略・人材開発

デジタル×教育で忘れてはならないこと

 昨今の企業向けの教育研修業界でも、他業界と同様にVRなどのデジタル技術の取り込みが見られ、バーチャルな空間でも相当リアルな体験学習ができ始めているそうである。人間の表情から感情を読み取るAIの技術も進み、教師や上司のマネジメントを代行できる日も近いかもしれないとのことで、もはやデジタル化は教育現場でもキーワードになりつつある。

 そのような中、先日、デジタル世界の教育で忘れてはならない考え方に触れた瞬間があった。それは日曜日の夕方の出来事。最近、私の妻と娘が多摩川沿いのコミュニティカフェにはまり、週2~3回程度通っているとのことで、誘われるままに足を運んだ時の話。

 一軒家のそのカフェの客層は子供たちばかり。その他、老人、青年など、世代が全く異なる人たちで埋め尽くされていた。何か妙だと感じていると、カフェのスタッフからメニューは提示されず、お店にあるものなら何でも自由に食べて良いとのこと。机の上の色とりどりのお惣菜やお菓子を見ていると、妻からは「食べたければ食べていいのよ。お店を出るときにお世話になった気持ちを最後に投げ銭すれば大丈夫」とのことでレジの精算がない。そして、しばらくすると、スタッフから「今日はお客さんも多いから皆でご飯にしましょうか」と言われて、来ている客全員と食卓を囲み、知らないうちに溶け込んでいた。宴もたけなわになり、そろそろ帰ろうかと思っていたら「今日泊まっていきますか?」というスタッフからの投げかけがあった。最初は冗談かと思ったが、どうやら本気らしく、お店の奥と二階はゴロンメンバーと呼ばれる居候数人が住み込み、皆で共同生活をしているとのこと。
 妻によく聞くと、このカフェは総合福祉サービスを企画・運営するNPOが母体となり、運営者の方は、元演出家の方。ビジネスの第一線から退いた後に、老人の生き甲斐や子供たちの生きる力を育てるべく、また、そこに関わる主婦や青年、中年も交えて、心の絆を深めたい人たちが自由に集える場を作りたいという志から設立した。毎日のようにカフェには多くの人たちが集い、寂しさを感じずに皆が家族のように一つになり、ヒトを信頼する人間本来の気持ちに触れられるとのことだった。

 私たちの日常でデジタルを身近に感じない日はなく、教育研修や人材業界も様々なサービスが日々開発されている。しかしながら、私たちは関わるヒトたちの成長や心を支えていることを決して忘れてならないと感じる。私自身、サービスの洗練さ・革新性・効率性を研究・企画することも大切だが、目に見えにくい人間同士の温かさや信頼関係が育つためにどうあるべきかの本線は、これからも絶対に外さぬようにしていきたいと思う。

この記事の執筆者

馬場 英博

コンサルタント
専門分野:人材育成