LEADERS BLOG

リーダーのためのブログ

2019.01.25

協創の現場から人材戦略・人材開発

定着を支えるもの

   昨年の話になりますが、ある会社の教育担当の方から「新人の定着率が向上し100%を達成できそうです」とのご報告をいただきました。同社に対して、指導者向けの研修会や定期面談を例年実施してきたため、大変うれしい報告内容でした。ご担当の方の話によると、外部の知見を借りただけでなく、自分たちの職場の変化が、新人の定着を加速させたとのことでした。一体、どのような変化が定着に結びついたのでしょうか。

 第一の要因は「コミュニケ―ションの頻度を圧倒的に増やした」点だそうです。新人配属後、同社では、担当上司と新人のすれ違いをなくすために、週単位の業務報告書を新人に作成してもらっていますが、担当した仕事の報告を列挙するだけでなく、仕事や日常生活を通じた達成感や悩みなどの気持ちについても素直に書き出してもらい、上司は必ず報告書に目を通し、週一回の対話も行ったそうです。その結果日常的なすれ違いが減り、上司や職場への信頼関係や仲間意識を深めることができた点が、何より大きかったとのことです。

 そして、第二の要因は「会社全体の垣根をなくし、他職場に対する関心を深めるようにした」点が、新人の気持ちや行動にプラスの変化をもたらしたとのことでした。同社では、組織としての融合を図る施策として横串プロジェクトや他部門の商品・サービスを発表する場を意図的に設け、「継続すれば何らか良い結果が得られるだろう」との仮説に立って取り組んできました。その効果は日常の中に見え始め、営業担当者が他部署の人間と同行する活動が増え、「他部署を交えた方が数値結果は出やすい」との気づきが得られたとのこと。そして、新人にも良い影響が出始めたそうです。例えば、工場管理部門に配属された新人が他部署の社員に稼働状況や仕事の苦労をさりげなく聞きに行くなどの行動が見られ、会社として横のつながりが強まったことが連帯感や団結力につながり、新人にも仲間意識が芽生えていったのではないかとのことでした。

「育てる」ということは「誰かが何かを教える」ことだと、私たちは考えがちです。けれども、職場に定着して頑張り続けるためには、仕事に精通し習熟してもらうだけでなく「会社は“ 仲間 ”の集まりである」との前提に立ち、安心感や信頼感を育てることも重要ではないかと改めて感じられました。教える側は、新人に対して日々の仕事を通して「わかったか」「できたか」と、ヤキモキ焦るだけでなく「しっかり仲間になれたか」という目線を忘れてはならないと改めて思います。

この記事の執筆者

馬場 英博

コンサルタント
専門分野:人材育成