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リーダーのためのブログ

2018.07.11

エグゼクティブ・アイ

自社にとっての「働き方改革」とは?~生産性向上を越えて~

 6月末、働き方改革関連法が成立した。今後、労働時間の規制強化・高プロ制度・非正規社員の待遇改善などさまざまな対応を企業は求められる。

 過労死が社会問題として大きく取り上げられ、ヤマト運輸に代表される運送業界の過重労働やハラスメント問題など、働く人々に苦痛を与える企業はすぐブラックと揶揄される時代になっている。働く人を保護し、健全経営を促すという意図は理解できるが、以前にも本コラムで触れたように、この課題に以前から直面している人は、「働き方改革」=単なる法への対応という解釈はしていないと思う。

  私が対面しているお客さまとの会話の中でも、「働き方改革」への注目度や実際の取り組みがますます加速していることを感じる。ある会社では、まずは業務改革から着手し時短を実現することから始め、ある会社では、フレックス制度や在宅勤務の拡充で環境を変えるというように捉え方もアプローチの仕方もさまざまである。

 どちらも一見「時間」ということをターゲットとしているように伺えるが、本当にそれだけが目的なのだろうか。また、時短を実現するプロセスが業革だけで実現できるのか。そのあたりを話し合っていくと、今の仕事のやり方を変えて生まれる時間でもっと社員の仕事領域を拡大してもらえるような教育や新たな体験を増やす時間に充てたい、在宅勤務という制度を活かして、自分の仕事成果をしっかり自己管理できる責任感とプロフェッショナル度を養ってもらいたいというように、目先の生産性だけではない社員の成長と充足感を願っていることが多い。直近では、「私が考える働き方改革は、既存の業務にとらわれることなく、すべての社員が毎日ウキウキ・ワクワク働ける状態を創りあげること」と明言する経営者もいた。

  実際に私たちもお客さまの働き方改革のお手伝いをするケースも増えてきており、その第一弾として社内の業務改革からアプローチするケースがあるが、それは業務を個別に改善するということよりも前に、それぞれの部署の仕事が本来果たすべき使命は何なのかということの明確化と意思統一からスタートさせる。そして、その使命に寄与している仕事とそうでない仕事の基準を、実際に仕事をしている人々に決めてもらう。さらに、自分たちが実現したい職場とはどのような職場なのかを描いてもらう。そのような過程を経て仕事の断捨離やIT活用、職場の新たなルールづくりを検討する。このような活動を行うことにより職場単位での一定の成果を得ることはできるが、全社的な「働き方」創造への道のりは長い。

  また、製造部門などは、設備投資やIoTの活用により、省人化や効率化を図るプロセスは描きやすいのだが、営業など相手があって仕事を行う部署は自分たちの都合だけでは解決できないことが多すぎて、時短に直接対応しようとすると人手不足の問題が新たに浮上することもよく起こる。企画や開発系の仕事となると、アウトプットの質が問われるため、時間という生産性向上のアプローチだけでは解決できない。

 これから展開される施策の多くが、時短優先となると、多くの企業が望んでいる「人々の創造性を育み、多様性を活かす」というテーマと逆行する活動になりかねないという危険性もはらんでいる。せっかく築き上げた大切なものが次第に失われていくことが十分考えられる。

私たちの会社でも、これまでの歩みの中で、自らが望んでいる働き方になっているか、望んでいる状態にふさわしいかどうかを考える機会を設け、さまざまな施策を打ってきた。そのために職場の移転・リニューアル・自分たちの独自のルールを決めてきた。うちの職場は人が集うことによる「学びと創造の刺激の場」でありたいのだが、それでも気を付けないと作業場化現象は起こってしまう。働き方改革は常に進化し続けなければいけないと自覚している。

  働き方改革とは、生産性を上げるレベルにとどまることなく、それぞれの会社の成長を支える新たな構造改革と規範変革を実現し、新たな企業文化を創造することで、働くというそのこと自体が喜びや楽しさや幸せに繋がるものにしていくプロセスなのではないかと思う。

それなりの時間は必要とするだろうが、経営陣は担当部署に任せるのではなく、ウチとしての働き方改革はどうあるべきかきちんと意思統一して取り組むテーマであると思う。 

 「理想の働き方改革は確かにそうかもしれないけれど、現実的には無理」と思ったら、その先にどのような社員と風土が形成されるのかを一度考えたほうがよい。法律に対処することを目的とせず、自社としての「働き方改革」の姿、得たい状態とシナリオづくりに着手する時が目の前にきている。

この記事の執筆者

臼井 弥生

代表取締役社長